松本人志はなぜ笑い続けるのか? 元芸人が解説する「女子メンタル」「イケメンタル」に散りばめられたお笑い技術とは?

技術がある

NO.9690514 2021/07/24 22:51

松本人志はなぜ笑い続けるのか? 元芸人が解説する「女子メンタル」「イケメンタル」に散りばめられたお笑い技術とは?

松本人志はなぜ笑い続けるのか? 元芸人が解説する「女子メンタル」「イケメンタル」に散りばめられたお笑い技術とは?の画像1
ダウンタウン(写真/GettyImagesより)

「人を笑わせる時、笑わせる側は笑ってはいけない」

 皆さんはこのような言葉を聞いたことがあるだろうか?

 お笑い芸人なら誰しも聞いたことがあるこの言葉。誰が最初に言い出したかは知らないが、脈々と言い伝えられてきた鉄則だ。

 笑わせる側が笑ってしまうと、見ている方が冷めてしまうとか、真顔で言った方がより面白く感じさせられるとかそういった理由からきているのだろう。

 この言葉を鵜呑みにすると、面白い人とは「笑わずにふざけられる人」という方程式が成立する。

 という事は逆に笑ってしまう人間は面白くない人という事になるのか?その答えはNOだ。

 思い出してほしい。年末の恒例行事になっている「ガキの使いやあらへんで」(日本テレビ系)の“笑ってはいけない”シリーズ番組内で誰よりも楽し気に笑い、一番多く罰ゲームを受けているのは、いまだにお笑い界のトップを走り続けるダウンタウンの松本人志さんだ。

 となると、笑ってしまう人間が面白くないという説は、間違っているという事になる。

 では松本さんはなぜ、誰よりも笑ってしまうのか?

 人が笑うときは大抵自分の想像を裏切られるか、想像が勝手に広がっていくか。僕は行動心理学や人間について勉強したわけでは無いので、確実なことはわからないが、この2パターンが笑ってしまう主な原因だと思う。

 松本さんの場合は視覚や聴覚で受け取った情報を、自分が面白いと思う笑いのテクニックや持っている引き出しの部分と照合し、一番面白いと思うものを頭の中で具体的に想像し、勝手に広がっていき、受け取った印象より何倍も面白くなってしまい、結果笑ってしまうというケースだろう。

 そんな松本さんがひたすら笑い続ける番組がある。

それはAmazonプライム・ビデオで配信されている「HITOSHI MATSUMOTO presents ドキュメンタル」だ。

 知っている人も多いと思うが、松本さんが発案した「密室笑わせあいサバイバル」。毎回10人の芸人達が自腹の参加費100万円を手にあらゆる手段を使い笑わせあい、最後まで笑わなかった芸人が総額1000万円を手にするという番組。

 以前違うコラムで少し紹介したことがあるが、今回はこの番組についてより深く元芸人目線で分析していく。

 このような芸人やバラエティ番組を書くコラムであるなら、もっと早く記事にしていてもおかしくない番組だが、番組の内容が芸人受けが強いというか、どこか一般向けでは無い気がしてなかなか書くことが出来なかった。

 ではなぜ今回この番組に焦点を当てたかというと、芸人が参加するドキュメンタルではなく、去年の10月と今年の6月に放送された「まっちゃんねる」(フジテレビ)内で放送された芸人以外の女性だけを集めて競わせた”女子メンタル”、同じく6月に放送されたイケメンだけを集めた”イケメンタル”を見て感じたことがあり、思い切って書くことにした。

 まずは”女子メンタル”から分析してみよう。

 昔からお笑いは男性より女性の方が笑いを取りづらいと言われている。理由は女性が男性と同じように変な顔をしたり下品な事をすると、悲壮感が出てしまうからだ。

 しかし森三中やゆりやんレトリィバァなど男性より過激なことをしても笑える女性芸人が現れ、その定説が崩れつつある気がする。

 だがそれは芸人に限った事で、芸人以外の女性タレントとなると果たして笑えるのか?というのが率直な感想だった。

 だが、さすが芸能界を渡り歩いてきた猛者たち。個人差はあるもののそれぞれ芸人に負けず劣らずの戦略と度胸で笑いを取りにいっていた。

 特に戦略に長けていたのは優勝した峰岸みなみさんや、ファーストサマーウィカさん。このお2人は元々笑いのセンスがあり、狙いどころが芸人の笑わせ方に近いと感じた。

 素材の面白さが爆発していたのは浜口京子さん。あのまっすぐでつぶらな瞳が効果を発揮し、本人が狙っている以上の笑いを生み出していた。

 番外編には本来のドキュメンタルとは違い、松本さんの他に数名の芸人が観客として戦いをモニタリングするようになった。その目的は、松本さんを筆頭に芸人がどういうボケなのか、笑いどころはどこなのかを察知し、ボケの前にフリをいれたり、何が面白いのかをさりげなくわかりやすく説明したりつっこむことにより視聴者にとって笑いやすい環境を作るのだ。

 シーズン1でそれが顕著に表れていたのが、ファーストサマーウィカさんが「オススメの本紹介してもいいですか?」と言い、めちゃくちゃ付箋が貼ってある松本さんが書いた本『遺書』『松本』(ともに朝日新聞社)を出し、最後にまったく付箋の貼ってない相方浜田さんの『読め!』(光文社)というエッセイを出した。これは松本さんの本は勉強になるが、浜田さんの本は全く為にならないというボケなのだが、浜田さんの本を見た瞬間、芸人たちが「付箋張ってない!」とツッコミを入れ、現場の女性たちが意味が分かっていないというのを察知し、すかさずFUJIWARAの藤本さんが「これおもろいけど伝わるかなぁ?」とフォローを入れ、最後に松本さんが「高度すぎたな」とさらにフォローした。

 これによりこのボケは昇華され、場のテンションは上がったままになる。

 これともうひとつ同じようなシーンがあった。それは峯岸みなみさんが剛力彩芽さんの真似をしたシーンだ。剛力さんの「友達より大事な人」という曲を流し、CMをしていたランチパックを女性たちに配り、曲のサビに差し掛かったところで全力で踊るというもの。ボケとしては秀逸だが、見ようによってはただ踊っているだけに見え、何が面白いのかわからないという人もいるだろう。だが全力で踊っている峰岸さんに対して松本さんが「そんな全力で踊られても!」というツッコミを入れ、笑いどころを分からせてくれたのだ。

 参加者の女性たちと芸人によってドキュメンタルにも負けないクオリティに近づいていたと感じた。僕としてはシーズン1の方をお勧めする。比較的シーズン2は体を張った笑いが多い気がして、笑いのジャンルが少なく感じてしまったので。

 そして女子メンタルシーズン2と同じ放送で行われた、俳優などのイケメンたちを集めて戦わせた”イケメンタル”だった。

 参加者は高橋克典さんや、山田孝之さんといった俳優どころから、バラエティでも活躍している武田真治さんやJOYさんなど。ジャンルも知名度もバラバラなメンバーが集められていた。

 こちらに関しては女子メンタルより個人差が出てしまったように感じた。

 台本が無い状態で番組が進行していくという事は、皆さんが普段、友だちと会話をしている時と同じで、その場で誰かに話しを振ったり、どこに注目するかを決めるような進行役が自然と決まっていくことが多い。その進行役がある程度一般的な笑いのセンスやトークスキルがある場合、話が盛り上がったり、笑いが起きたりする。

 イケメンタルに関しては、笑いのスキルが高いと思われる山田孝之さんや武田真治さん、一番ベテランで頼られる存在の高橋克典さんは進行役になるタイプではない。となると次にバラエティ慣れしているJOYさんが自然と進行役になる図式が考えられるのだが、実際は進行役が何人も出てきてしまい、収拾がつかない状態になってしまった。

 さらには進行役が話しの筋を作ることが出来ない故に、それぞれが焦ってしまい我先にと笑いを取りにいった結果、集中力がなくなり、最終的に現場の空気が散漫になってしまったように感じた。

 ここに女子メンタルでいうところのファーストサマーウィカさんのような進行役がいれば、最後まで集中力が途切れず笑わせ合いが出来たのではないだろうか。

 数人で筋書きのない話し合いをするという点において、このドキュメンタルはただのバラエティ番組ではなく、皆さんの日常生活においてとても勉強になる番組だと思う。会社での会議や、カフェでの雑談、今はなかなかできない飲み会など。

 TPOに応じて会話の内容は変わってくるが、ただ目立とうとするのではなく、自分の役割を見極めることによって、各々の場で存在感を持ち、一目置かれる奴になることも出来る。

【日時】2021年07月24日 19:00
【提供】日刊サイゾー
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Source: 芸能野次馬ヤロウ

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