『チコちゃんに叱られる!』リレハンメル五輪の失敗ジャンプを永遠にツッコまれる原田雅彦

ツッコまれる。

NO.9334708 2021/03/19 23:25

『チコちゃんに叱られる!』リレハンメル五輪の失敗ジャンプを永遠にツッコまれる原田雅彦
『チコちゃんに叱られる!』リレハンメル五輪の失敗ジャンプを永遠にツッコまれる原田雅彦
 2週の休みを挟んで、3月12日に久しぶりに『チコちゃんに叱られる!』(NHK)が放送された。

ゲストは初登場の秦基博と、今回が2回目の登場となる指原莉乃。

チコちゃんは指原を「HKT48」と呼んだが、彼女が同グループを卒業してかれこれ1年以上が経っている。

あと、秦がバラエティ番組に出るのはかなりレアな印象だが、ジョイマンの高木晋哉と秦が小中学校時代の同級生という事実は知る人ぞ知る話だ。

“キックの鬼”沢村忠の名前を出すチコちゃん(5歳)

 この日最初のテーマの回答者を決めるべく、チコちゃんはスタジオの3人に「アニメや漫画に詳しいステキな大人ってだーれ?」と問いかけ、指名されたのは約7,000冊の漫画をコレクションしているという秦だった。

7,000冊って、それだけでマンションを借りるのが必要なレベルだ。

というか、7,000冊のコミックスを買うために必要なお金は数百万円に及ぶ。

さすが、売れっ子シンガーソングライターである。

チコちゃん 「最近、流行ってる漫画と言えば何?」
秦     「鬼滅の刃」
チコちゃん 「主人公たちは何と戦ってるんだっけ?」
秦     「鬼」
チコちゃん 「それ、なに? 鬼ってなに?」
 というわけで、番組は名前に「鬼」の文字がある椿鬼奴に話を聞きに行った。

彼女に「鬼ってなに?」と質問を投げかけると、鬼奴はあっさり正解した。

「鬼滅のブームと共に、鬼仕事が2020年は結構ありましたので」(鬼奴)
 確かに、2月27日放送『ネーミングバラエティー 日本人のおなまえっ!』(NHK)が鬼の特集をした回に彼女はゲスト出演していた。

っていうか、同じ局でネタ被りしてるじゃないの……。

 このテーマの答えは「目に見えないなにか」だった。

日本では古くから目に見えないものを「隠(おん)」と呼んでおり、非常に恐ろしいものと考えられてきた。

今から1000年以上前、まだ科学的な知識のない人々にとって雷や洪水といった天変地異や疫病は目に見えないなにか=隠の仕業だと考えられていた。

一方、「鬼(き)」という漢字は元々、死者の魂や霊魂という目に見えないものを意味していた。

つまり、「鬼」という漢字には「穏」に近い“目に見えないもの”という意味があったのである。

その後、「隠(おん)」は発音しにくいので、やがて「隠(おに)」と発音されるようになり、「鬼(き)」という漢字が非常に近い意味を持っていることから、やがて「鬼(き)」という文字に「おに」という呼びが与えられた。

それが、日本の「鬼(おに)」の成り立ちと考えられるのだ。

このことについては、平安時代中期に作られた辞書『和名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)』にも記載があり、「鬼(おに)」は「隠(おん)」が訛った言葉だと書かれている。

つまり、鬼とは疫病や災害、もしくはそういうことを起こす得体の知れない何者→“目に見えない何か恐ろしいもの”を意味する言葉だったのだ。

 そして、時代の経過と共に鬼の概念に変化が起こった。

鎌倉時代になると本来目に見えない鬼に形が与えられ、それを描いた絵が増えていったのだ。

例えば、鎌倉時代に描かれた絵巻『春日権現験記絵(かすがごんげんげんき)』には、疫病に苦しむ人々の家に鬼が張り付いた絵が載っている。

本来、目に見えないはずの疫病の原因を形を与えて見える化し、「何とか、こいつに勝たなければいけない」という闘争心を掻き立てるのが目的だ。

現在、新型コロナウィルスのニュースを流す際、必ずと言っていいほど顕微鏡で拡大したウィルスの写真を映すのと似ている。

「コロナに勝たなければいけない!」と闘争心を掻き立てるのが目的だろう。

というか、こういう発想を見るにつけ、日本はつくづく漫画の国だと再認識する。

疫病原因の見える化という手法は、『ジョジョの奇妙な冒険』におけるスタンドと構造は全く一緒だ。

 ところで、『春日権現験記絵』に描かれた鬼をよく見ると2本の角が生えていない。

この頃の鬼は我々がイメージするそれと随分異なり、角が生えていない鬼も存在したのだ。

その後、室町時代後半から江戸時代にかけ、現在の鬼のイメージに近い人型で角の生えた姿が一般的化していく。

その理由の1つと考えられるのは、室町時代に発展した能などの伝統芸能だ。

鍵を握るのは、能に用いられる2本の角を持つ般若の面。

そもそも、これは強い怒りや嫉妬により鬼になってしまった女性を表すために使用されるという。

室町時代は女性が嫉妬や怒りによって鬼に変わる物語がたくさん作られた。

それにより、2本の角が生え、口が裂けて人型いう鬼のイメージが定着していったと考えられるのだ。

 VTRが終わり、「鬼みたいだなと思う人は?」と質問を受けたチコちゃんは「沢村忠」と回答した。

確かに、キックボクサー・沢村忠は“キックの鬼”と呼ばれていたが、彼が活躍したのは昭和40年代のはずだ。

MCの岡村隆史でさえ知らなかった沢村を、なぜ5歳児のチコちゃんが知っているのか……。

 この日2つ目のテーマは「スキージャンプのK点ってなに?」という疑問である。

筆者は「危険(KIKEN)の頭文字のK」と聞いたことがあるが、日本語が語源になっている時点でおかしいし、この説はきっとジョークだろう。

昔からスポーツ中継ではアナウンサーが「K点越え!」と連呼しているものの、K点についての解説は聞いたことがなかった。

チコちゃんが発表した答えは「昔は『極限点』だったけど今は『建築基準点』になりました」である。

 詳しく教えてくれるのは、長野オリンピック・スキージャンプ団体金メダリストであり、現在は全日本スキー連盟理事の原田雅彦さんだ。

久しぶりに見た!
――原田さんといえばK点っていうイメージがあるんですけど。

原田 「あの、私、本当にK点に……まあ、思いがあるんですけどね」
 K点とは、ジャンプ台の踏み切り台から斜面の約120m先のポイントを指すそうだ。

スキージャンプはジャンプ台の大きさによって種目が分かれており、ラージヒルの場合は踏切台から120m先をK点と呼んでいる。

 K点を有名にしたのは、1994年に行われたリレハンメルオリンピックだ。

1人目の西方選手がK点を大きく越える135mの大ジャンプをし、続く岡部選手も133mの大ジャンプをした。

3人目の葛西選手の飛距離は120mで、日の丸飛行隊はK点越えを連発! 日本は2位のドイツを大きく引き離し、最後の原田さんが105mさえ越えれば金メダルという状況だった。

「なにも考えられなかったというか、とにかく冷静でいられなかったんだと思います。

今、思えば」(原田)
 前年の世界選手権を優勝し、名実ともに日本のエースだった原田さん。

普段であれば120mのK点越えは珍しくなかった。

彼がジャンプした際の実況が生々しい。

「高い! 来るか!? うわ~、途中で落ちたか! 失敗したジャンプ。

しかし、どうか? 距離は? 97m50。

日本、銀メダル!」
「まあ、頭が真っ白になったですね。

チームメイトがね、励ましの声をかけてくれたんで立ち直ることができましたけども、ものすごい辛かったですね」(原田)
 正直、もうやめてあげてほしい。

このときの失敗ジャンプについてまだイジる『チコちゃん』。

原田さんは一生言われ続ける運命なのか? 普通だったらこんなの立ち直れないだろう……。

 しかし、トラウマを払拭するかのように4年後の長野オリンピックで彼はリベンジした。

このときの実況は、もはや快哉の雄たけびである。

「K点以上飛べばトップに出てくる。

今度は高いか! 高い! 高くて! 高くて! 高くて! 高くて! 行ったー! 大ジャンプだ、原田~!」
 K点を大きく越える137mの大ジャンプでチームの優勝に貢献し、見事金メダルに輝いた原田さん。

まあ、彼はリベンジできたものの、リレハンメルの他のチームメイトはそうは行かなかったわけだが……。

 元々、K点はドイツ語のKritischer Punkt(クリティッシャー・プンクト)の略である。

「これ以上飛ぶと危険な『極限点』」という意味だ。

K点越えは、危険を伴うほどの大ジャンプという意味。

ジャンプ台はK点を境に斜面が緩やかに設計されているため、K点を越えると着地が難しくなり、大きな転倒につながる危険性があった。

 原田さんらが金メダルを獲得した長野オリンピック(ラージヒル)ジャンプ台・スタート地点からの景色を見ると、そこは想像以上の高さである。

それもそのはず、実はこの高さは東京タワーのメインデッキとほぼ同じ138mなのだ。

つまり、長野オリンピックでの原田さんの137m大ジャンプは、東京タワーのメインデキッキから勢いよく滑り落ち、上空86mの地点でジャンプし、そこから時速100km以上のスピードで東京の街を滑空し、勢いそのままに地面にドカンと着地するのと一緒ということだ。

人が命綱を付けず、東京タワーからおよそ200mの距離を猛スピードで落ちていくという異常事態。

そんなの怖すぎる。

スキーで滑って飛ぶなんて発想そのものが、やっぱりどうかしているのでは? とんでもない競技だ。

 その後、K点越えを果たす選手は続々と現れ始めた。

その要因の1つがV字飛行である。

1960年代後半、ジャンプのスタイルはスキー板を揃えて飛ぶクラシックスタイルが主流だった。

当時、ラージヒルのK点を越える選手はほとんどいなかった。

しかし、1990年代に入ると板をV字にして飛ぶV字スタイルが登場! スキー板を広げることで風を受ける面積が大きくなり、選手を上に押し上げる力が増え、飛距離は飛躍的に伸びた。

事実、1998年の長野オリンピックで活躍した日の丸飛行隊は深い前傾のV字飛行でK点越えを連発している。

選手の滑空技術や着地技術はどんどん進化し、K点越えはそこまで危険ではなくなったのだ。

 同時に、長野オリンピックから6年後の2004年にはK点という言葉から「極限点」という意味がなくなった。

元来、K点が意味していた「これ以上飛んだら危険」とされる極限点は140m付近まで延長し、現在は約140m越えの大ジャンプを“安全に着地できる目安となる地点”という意味の「ヒルサイズ越え」と呼ぶようになったのだ。

そして、K点は極限点を意味するKritischer Punktから、そのジャンプ台が何m飛行可能な設計になっているかを示すKonstruktionspunkt(コンストルクティヨスプンクト)という建築基準点に変更された。

なるほど、よく同じ頭文字を持つドイツ語を見つけたものだな……。

――K点越えって言わなくなるのは、ちょっと寂しかったりしますか?
原田 「どんどん距離が伸びるということで、スキージャンプがどんどんどんどん進化してる。

まあ、嬉しいことですよ」
――本当に寂しくないですか?
原田 「いや、少しだけ。

ちょっと寂しいですね(笑)」
 わかる。

「ヒルサイズ越え」よりも「K点越え」のほうが響きだってカッコいいし。

 それにしても、2週空けての放送は随分久しぶりの感覚だった。

ちなみに、今夜放送『チコちゃん』のゲストは高畑淳子と小島よしおである。

(文=寺西ジャジューカ)

【日時】2021年03月19日 20:00
【提供】日刊サイゾー


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Source: 芸能野次馬ヤロウ

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