【芸能】ナイツ塙宣之が“芸能界引退”したい理由「65歳で辞めたい」松本人志の影響でM-1も終わる?

塙さんが引退することになるということはナイツも活動休止になるのかな…。でも、このペースで活躍し続けるってすごいことだなと感じます。

ナイツ ザ・ラジオショー 』(ニッポン放送)や『ナイツちゃきちゃき大放送』(TBSラジオ)など、漫才師のみならずラジオパーソナリティーとして大活躍のナイツ・塙宣之さん。今年5月、そんな彼が義父・静夫さんとの暮らしを綴った著書『静夫さんと僕 』(徳間書店)を上梓した。

 ラジオ番組で語ったエピソードトークをきっかけとして本書の発売に至っているが、そもそも塙さん自身は現在の活動をどう考えているのか。前編では、ラジオ中心の活動になった背景、ベテラン漫才師やおじさんの魅力などについて聞いた。

 後編では、テレビ露出が少ないことへの葛藤、芸能界引退について、ダウンタウン松本人志さんの影響力の大きさ、今年の独演会やってみたいことなど、さらにパーソナルな部分を深掘りしていく――。

◆学校寄席で「反応の薄さを痛感する」

――5月10日YouTubeチャンネルナイツ塙の自由時間』の生配信地下芸人ラジオ」の中で、ラジオを聴かない近隣の方から「『最近お仕事してますか?』って言われる」とおっしゃっていて驚きました。

塙宣之(以下、塙):何年か前からすると、もう明らかに学校寄席とか行っても反応が薄いのは痛感するんですよ。若い子があんまり俺たちのこと知らなくて、「オール阪神・巨人師匠みたいになってるな」って。「漫才師としてお父さん知ってる」みたいな感じですよね。

 そもそもテレビに出たくないわけじゃないし、もうちょっと露出を増やしたいとは思うんですけど、今テレビ出てる人たちがもう強過ぎるんですよ。だから、「勝手に辞めたりしてくんないかな」とか思って(苦笑)。それぐらい空きがない状態ですから。

 リアルな話で言うと、単純にライバルがいなくなるから「もうちょっと歳とってきたら出れないかな」ってプラス思考で考えるようにしてます。とはいえ、当然何もしなきゃこっちに回ってこないんですけどね。

◆ひとまずYouTubeの土地を購入した

――ただ、一方で若者がテレビを見ない風潮もあります。

塙:それで僕もYouTube2020年から始めたんですよ。僕にはわからない世界なので、動画の編集は20代クリエイターの子たちに任せてやってますけどね。

 今もほとんど収益にはなってないんですけど、「この土地を買っておかないと」って気持ちが大きかった。いつかラジオも終わってテレビも出なくなって、寄席も高齢化して客がこなくなっちゃった時に、「本当に飯食えなくなるぞ」って不安がどっかにあって。

 これは、さすがに何も手を打たないのはまずいと。そう思って、ひとまずYouTubeの土地を購入した感じなんですよね。

◆しょっちゅう、「俺ヤバいな」って考えます

――先ほどと同じ「地下芸人ラジオ」の中で、「ラジオ番組がいつ終わるっていう保障がない」ともおっしゃっていました。

塙:なんかふと考えますね。今の仕事がなくなる可能性だってぜんぜんあるし。子どもも3人いて、当たり前みたいに専業主婦の奥さんと生活してるけど、「今の仕事全部なくなっちゃったらどうするんだろう」ってマジで思う時ありますからね。

 例えば相方が死んじゃうことだってあるかもしれない。そしたら漫才できないし、ラジオも難しいだろうなとか。「『球辞苑』(NHK BS1)と何だけで食えるかな」「今やってるJ-COMの番組(『東関東オンエアー 純喫茶塙』)だけで月にどれぐらいになるのかな」みたいに考えて。しょっちゅう、「俺ヤバいな」って考えたりしますよ。

ラジオのネタのために生活を全部変えた

――ドラマチェックしてYouTubeランキング動画を公開したり、「劇団スティック」で公演を打ったりと活動の幅を広げているのも、そういった不安からくるものですか?

塙:ある意味そうですね(笑)。もう今の僕の生活はラジオなので。ラジオパーソナリティーとして、たぶん芸人では日本で一番ぐらいやってると思うんです。だとしたら、やっぱりラジオに向かう姿勢として、とにかくエピソードトークを作るために何かをやってないといけないと思って。

 ドラマもそうだし、劇団スティックもそうだし、YouTubeもそうだし。要するに、ラジオのネタのために生活を全部変えたって感じですね。地上波ラジオがあるから、もう1個YouTubeで「地下芸人ラジオ」もやってネタを増やすとか。

 そこは放送作家の高田(文夫)先生とか、ああいうラジオの師匠の影響もあるのかな。高田先生ってめちゃくちゃいろんなものを見てるじゃないですか。そういうところから、「もっと頑張んなきゃ」って思うようになりましたね。

◆相方は納得してないけど「65歳で辞めたい」

――塙さんが芸人を目指すきっかけとなったダウンタウン松本人志さんは「65歳で引退」をほのめかしています。塙さんは芸能界引退を考えたことはありますか?

塙:相方の土屋はあんまり納得してないですけど(苦笑)、たぶん松本さんの前から「65歳で辞めたい」って言ってたと思います。

 漫才協会にいると、だいたい70歳ぐらいで仲悪くなったり相方が病気になったりして辞めていくんですよ。「それが美学だ」って言う人もいるんですけど、「まだ動ける時に辞めてもいいんじゃないかな」っていうのが1つあります。

 あと、今ありがたいことに休みがほとんどなくて。これは寄席芸人の宿命なんですけど、テレビラジオの間に全部寄席が入るんですね。2008年からテレビに出て、年末年始も正月含めて寄席、寄席、寄席でずーっと休みがない。「このまま死んだら俺、何のために働いてるのかな」と思ってきちゃって。

 とくに子どもができたのが大きいんですけど、もっと自分のために人生を使いたいなというか。それを実現するには「仕事を辞めないと難しいだろうな」と思ったんですよ。僕はちょっと時間できると「独演会のネタも考えよう」とかって、ずーっとやっちゃう性格だから、今のサイクルのまま自分の時間を作るのは無理だと思うんですよね。

中学生ぐらいの一番楽しかった頃の自分に戻りたい

――5月にご家族で奄美大島に旅行するYouTube動画が公開されましたが、あれは久しぶりの休日だったんですか?

塙:一応、春休み夏休みはいただくんですけど、その奄美大島の旅行も結局YouTubeに動画上げたりラジオで話したりするから仕事みたいなもんじゃないですか。けど、辞めちゃえばそういうこと考えなくなりますからね。

 だって、世間の人は定年まで頑張ったご褒美として老後の暮らしがあるわけじゃないですか。「何で俺はずっとやんなきゃいけないんだ」っていうのがマジであります。もっと普通に旅行とか行きたいし、中学生ぐらいの一番楽しかった頃の自分に戻りたい。

 今、楽しくないんですよ。まぁ65歳まで仕事があるかわからないですけど、ずっとあるとしたら引退したいですね。

松本さんが引退したらM-1も終わる

――もし松本さんが引退した場合、M-1グランプリの審査員は続けますか?

塙:松本さんが引退したらM-1も終わるんじゃないですか。だって、あと5年ですよね。続く可能性もなくはないですけど、大会の格がなくなっちゃいますよね。「THE SECOND」のアンバサダーもやられてますけど、ああいう大会の顔になる方ってなかなかいないと思うし。

 松本さんってウォルト・ディズニーみたいな感じですよね。例えば「大喜利」を飛躍させて『IPPONグランプリ』(フジテレビ系)っていう、いわばお笑いに特化したテーマパークを作ってる。今みんながお笑いやってるフォーマットって、結局松本さんが作ったものから逃れられない気がしますよね。

――たしかにお笑いゲーム化、競技化を促したのは、松本さんによるところが大きいように思います。

塙:大喜利とか漫才とか、『ダウンタウンガキの使いやあらへんで』(日本テレビ系)のゲーム企画も含めて、そういう遊びをずっと考えて作ってますからね。そこが松本さんすごいところだと思います。M-1にしてもそうだし、たぶんその中で僕は動いてた人間なんです。

 松本さんが考えてくれたものを、僕はただお客さんとしてやってきた人生。だから、「自分が何か作れたか」っていうと結局あんまり作れた気がしなくて。そんな人の代わりがいるかって言ったら、なかなかいないと思う。僕はいなくていいと思いますけどね、それで楽しかったですから。

戸田恵子ミュージカルを観に行った

――年1回ペースで『静夫さんと僕』のように著書も出版されるなど、塙さんの活動は多岐に渡ります。新たに「今後こんなことをやってみたい」と考えていることはありますか?

塙:劇団スティックミュージカルをやりたいです。この前、戸田恵子さんのミュージカルを観に行ったんですけど、「これはできるな」と思って(笑)。下手だからこそ、“このフォーマット”を使えば絶対にウケると思いましたね。

 あと「キングオブコント」に出たいとかそういうのじゃなくて、ナイツコントをやりたい。もともとお笑い芸人になった時って、漫才師になろうと思ってなかったんですよ。『ダウンタウンのごっつええ感じ』(フジテレビ系)のコントとか見て育ってるし、大学の頃は僕も土屋も違うコンビで、ずっと合同コントとかやってましたからね。

 それが浅草の劇場に入って、漫才でテレビに出るようになって、“漫才師”として売れていくじゃないですか。漫才ばっかりやるとどんどん細くなってくし、結局行き詰ってくる感覚がどうしてもあって。漫才をずっとやっていくためにも、コントとかお芝居をやって、そこから生まれたものをまた漫才に生かせたらいいなと思ってます。

◆今年の独演会コントをやりたい

――以前、独演会で「半沢直樹」のパロディーコントを披露していましたが、ああいうものとは違う形でやりたいと。

塙:ああいう感じじゃないものですね(笑)。僕らの漫才って自分で作ったフォーマットがあるから、そこに情報を盛り込めばある程度作れるじゃないですか。

 コントって今ぜんぜん作れないんですよ。それがなんか自分の中で心地がよくて、本当にお笑いを始めたばっかりの頃みたいになれるというか。辛いんだけど、コントを考える時になんかすごくワクワクするんですよね。

 中川家さんとかサンドウィッチマンさんの単独ライブって、コントと漫才が半分ぐらいの割合なんですよ。よく考えたら、ナイツって「漫才サミット」(中川家サンドウィッチマンナイツの3組によるライブ、およびユニット)のメンバーなのにコントやってないなって。間に合えば、さっそく今年の独演会でもやりたいなと思ってます。

<取材・文/鈴木旭 撮影/スギゾー>

【塙宣之】
芸人1978年千葉県生まれ。漫才協会副会長2000年お笑いコンビナイツ」を土屋伸之と結成。2008年以降3年連続でM-1グランプリ決勝進出。THE MANZAl2011準優勝、平成25年文化庁芸術祭大衆芸能部門優秀賞、平成28年芸術選奨大衆芸能部門文部科学大臣新人賞、第39回浅草芸能大賞など受賞多数。著書に『言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか』(集英社新書)『極私的プロ野球偏愛論 野球と漫才のしあわせな関係』(ベースボールマガジン社)『ぼやいて、聞いて。』(左右社)など
Twitter@hanawa_nobuyuki

【鈴木 旭】
フリーランスの編集/ライター。元バンドマン、放送作家くずれ。エンタメ全般が好き。特にお笑い芸人リスペクトしている。個人サイト「不滅のライティング・ブルース」更新中

(出典 news.nicovideo.jp)

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Source: 芸能野次馬ヤロウ

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