かつてはテレビタレントとして売れれば安泰だった芸能界だが、昨今ではかつてほど稼げなくなったという声をよく耳にする。そんななか芸能人の多くは、ブランドプロデュースや飲食店経営、さらにはYouTube進出など活動の幅を広げている。
お笑いコンビ「流れ星☆」のたきうえ(瀧上伸一郎)さん(@hansamu1212)もそんな一人だ。『THE MANZAI 2013』決勝進出するなど実力派コンビとしてテレビなどで活躍する彼だが、実は新築アパートを複数所有する“大家芸人”としての顔を持つ。そのきっかけや相方であるちゅうえいさんの反応は? 本人に話を聞いた。
◆副業をやりたい気持ちはずっとあった
――副業へ興味を持ったきっかけとは?
たきうえ:いろんな先輩方を見ていて、お笑いの世界で生き続けるのはとても難しいことだと痛感していて。『進め!電波少年』(日本テレビ系)の「東大一直線」に出ていた坂本ちゃんは事務所の同期なんですけど、やっぱり芸人って浮き沈みがある仕事なんですよね。それもあって、お笑い以外に何か収入を得られる副業をやりたい気持ちはずっとありました。
――不安定といえば、コロナでエンタメ業界は大打撃を受けました。
たきうえ:僕なんてもう直撃ですよ。流れ星☆って、テレビよりイベントの仕事で稼いでいて、その仕事のほぼ9割がなくなりました。僕ら、勝手に「テツandトモ」さんをライバル視しているんで(笑)。さらにプライベートでは離婚(2020年)もしているので、いろんな角度からパンチが飛んできて散々でした。
――以前から興味があったという副業、どうやって始めたのですか?
たきうえ:僕らは『THE MANZAI 2013』(フジテレビ系)で決勝行かせてもらって、そこでやっと収入が安定したんです。その時に「これなら副業はじめられる」と思って、不動産投資のいろんな本読んで勉強して、都内に新築アパートを建てる投資法が自分に合っていると思い、本を書いた社長のところに電話しました。そうしたら「資産3000万円ないとできません」と言われて、「完全に無理だ」と思って。
じゃあ、似たようなビジネスはないかと調べて、最初にやったのが太陽光発電です。太陽光発電だったら、総投資額2000万円でできて、銀行から融資を借りたりと、不動産投資とやることが似ているので、そこでノウハウを学んでから不動産投資に移行した感じです。あとは副業とは違いますが、つみたてNISA、確定拠出年金、海外ETFの積立、小規模企業共済もやっています。
――SNSのプロフィールでは「副業が流れ星☆」とされています。
たきうえ:さすがにまだまだ流れ星のほうが収入は多いです(笑)。とはいえ副業の不動産や太陽光発電だけで、普通の会社員の年収くらいにはなっているかなって感じですけど、芸人やめるつもりは全くないです。
たきうえ:あれこそ怖いなって思います。ラーメン好きなんでわかりますけど、ラーメンってよっぽど美味くないと生き残れない世界で、それこそ芸能界と一緒。僕、最大のギャンブルが芸人だと思っているので、ギャンブルやりたくないから副業が必要なのに、そっちでもギャンブルするのはあまり意味がないと思うんですよ。「CR流れ星☆」打ちながら、「CRラーメン屋」も打つ生き方ってどうなのかなと(笑)。だから副業はちゃんと収入が入るものをやりたいです。
◆ウドさんは後輩に家2軒分オゴっている
――芸人さんはローンを借りづらいのでは?
たきうえ:結婚した時に自宅を買おうという話になって、ちゃんと銀行の審査に通るよう、確定申告3期分を黒字にする生活を心がけていました。こんな芸人他にいるかわからないけど(笑)。芸人って売れたら、夜の街で飲み歩いたり、後輩におごったり、贅沢品買ったりとかあると思うんですけど、僕はそういうのは全然なくて、むしろ後輩から逃げ回るように暮らしていました(笑)。
余談なんですけど、同じ事務所の先輩「キャイ~ン」のウド鈴木さんや、「ずん」の飯尾(和樹)さんって後輩の面倒見がいいんですよ。たとえば、30人くらいで飲みに行っても全員分おごってくださるんですけど、ウドさんと飯尾さんで支払いの時ケンカになるんですね。「おまえが払え」じゃなくて、「ここはおれが払う」「いや俺が払う」っていうケンカで、どんなケンカなの? ドMなの?って感じです。
それくらい男気のある先輩で、後輩の間では「ウドさんは今までに家2軒分、後輩にオゴってる」って伝説になっています。ちなみに飯尾さんがよく「ウドさんに家1軒分オゴってもらった」って言っているので、半分くらい飯尾さんにオゴっているのかもしれません(笑)。
それって尊敬できるけど、自分には真似できそうもない。ただ、事務所の後輩たちも普段からオゴってもらっているから、俺らと飲むときも「当然オゴってくれるんですよね」っていう期待感がヒシヒシと伝わってきて。それはちょっとやめてほしい(笑)。コロナで飲みに行く文化がなくなって助かりました。
――話を戻すと、節約生活で黒字体質にして自宅を買われた?
たきうえ:そうです。それで都内の駅徒歩8分くらいにある築浅戸建てを買いました。この物件、内覧5分で即決したんですけど、その日は新宿でライブやってて、リハーサル終了後にダッシュで内見に行って、すぐ本番に戻ってきました。
――5分の内覧で決められるものなんですか?
たきうえ:それまでに結構いろんな物件見てきたので、なんとなくいい物件がわかるようになってて、チェックポイントも自分のなかで決まってるんで5分くらいでパッと決めました。不動産っていい物件はすぐ売れるんで、それこそ瞬間蒸発ですよ。買う側としては大きな買い物なんで、本当なら数日悩みたいくらいなのに、商品の値段に対してバグってますよね。
その時、住宅ローンを借りた銀行の担当者がお年を召した方なんですけど、「じつは僕の同級生も芸人やっていて、たきうえさんのローン通るように頑張ります」って話になって「同級生って誰なんですか?」と聞いたら、同じ事務所の先輩、小堺一機さんだとわかり、ビックリしました。ご縁みたいなものを感じましたね。まあ、その後、離婚して家売っちゃったんですけど(笑)。
◆自宅の売却で「賃貸VS持ち家論争」に結論
――自宅売却では損しましたか?
たきうえ:これすごくいい勉強になったんですけど、僕が住んでいたエリアって築3年の物件を買って4年間住んで売りに出したら、買ったときより高く売れたんですね。だから4年分の家賃がタダになって、さらに数百万円が手元に残ったイメージです。だから「賃貸VS持ち家論争」ってありますけど、僕の中では結論出ています。
需要のある立地の物件は売れるし、人気が出る。逆に人気のないとこ買うとそれは売れない。たとえるなら、ラーメン屋を始める時に「飲食店は5年で9割潰れるからやめとけ」って話が出るけど、「需要がある美味いラーメンを作れば潰れない」ということです。
自宅の売買を経験したおかげで、アパートのような1億円近い商品を売ったり、買ったりすることに、ビビらなくなったというのはありますね。
<取材・文/栗林篤>
【たきうえ】
ともに岐阜県出身のちゅうえいと、高校卒業後の2000年にお笑いコンビ「流れ星」を結成(2021年に流れ星☆に改名)。2013年に『THE MANZAI』で決勝進出し、一躍人気芸人の仲間入りに。2020年に本名の瀧上伸一郎から「TAKIUE」、2022年には現在の芸名に改名している。流れ星☆単独ライブツアー 2023 「我道」が7月29日より開催
【栗林 篤】
不動産、マネー、ネットカルチャー分野を得意とするフリーライター。社会事情についても執筆する。
著書に『サラリーマンのままで副業1000万円』(WAVE出版)。Twitter:@yuutaiooya
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Source: 芸能野次馬ヤロウ