【アニメ】「新作はいらないという批判は分かる」 新作アニメ「LUPIN ZERO」監督と構成インタビュー

インタビューを受ける。

 「ルパン三世」の少年時代を描いた新作スピンオフアニメLUPIN ZERO」(全6話)が、12月16日からDMM TVで独占配信開始。ルパン役は畠中祐さん、次元役は武内駿輔さんが務めます。

【その他の画像】

 同作は、モンキー・パンチの原作漫画『ルパン三世』連載当初と同じ昭和30年1960年)代を舞台に、まだ何者でもない“ルパン”が高度経済成長期の日本を駆け巡るというオリジナルストーリー12月16日に第1話と第2話、12月23日第3話12月30日に第4話、1月6日に第5話、1月13日最終話が配信されます。

 「LUPIN ZERO」の制作に込めた思いについて、ねとらぼ編集部では監督を務めた酒向大輔さん、シリーズ構成大河内一楼さんに話を伺いました。

●マネじゃないルパンと次元がそこにいる

―― 畠中さんと武内さんの演技を見てどう思われましたか?

酒向 まずオーディションをさせていただいて、いろんな方の中から2人を選ばせていただいたのですが、畠中さんは絶対合うなと思っていました。ルパン三世は、1つのカットの中で表情や気持ちがころころ変わるんですよ。(表に出している)気持ちも、それが本当の気持ちか分からないんですよね。真面目なときにひょうきんなことを言ったり。それが畠中さんのなかから出てくるお芝居にちょうどハマってくるんです。

 畠中さんはそれだけの幅をお持ちで、まだ底が見えないんですよ。こっちが用意した映像に対して、どんどん(幅が)出てきて、きれいにルパンという器の中に入っていくんですよね。決してルパンモノマネじゃないけど、ルパンに見える。キャラクターと彼のパーソナルなお芝居がすごくあってるというのが聞いてみた感想ですね。

 武内さんを見た印象は、どんどん芸の幅を積み重ねていく方なのかなと。今までやってきた武内さんのお芝居に、今回は“次元”という新しい芸が乗っかったんじゃないでしょうか。ただの次元のマネじゃなくて、ちゃんと武内さんの気持ちが乗っかる次元になったと思っています。

 今回、“ルパンと次元がどうやって対話を重ねていくのか”を趣旨に描いたシーンがかなり多いです。コロナCOVID-19新型コロナウイルス感染症)で収録が別撮りになる中で、日程はバラバラになりましたが必ずあの2人がセットになる日程で組んでもらったんですね。それが本当に良くて。別撮りではできない“聞くお芝居”ができるんですよ。相手が何を言っているか、その場で聞く。聞くのもお芝居の一部だと僕は思っています。しゃべるだけでなく、聞くことでお芝居(のクオリティ)が上がるんですよね。

―― 高度経済成長期の日本が舞台になっていますが、設定や世界観はどのように決められたのでしょうか

酒向 原作に元ネタがありますけど、今回は、ほぼほぼ創作。あくまでも想像上の“こうだったであろう”を考えたときに、アニメーションからさかのぼっていくのが一番分かりやすいんじゃないかなと。視聴者に「これはルパンシリーズの一部だ」と思ってもらいたかったので、大塚さん(かつて「ルパン三世」の作画監督を務めた大塚康生さん)が描いた旧ルパンルパン三世 PART1)のデザインからさかのぼったデザインを書いてくださいと一応お願いはしました。

 そうすると、必然的に1971年よりも以前になり、昭和30年代になっていきました。高度成長期を描こうとしたというよりは、旧ルパンの昔の話。つながっているかどうかは僕にも分からないですけど、そういう経緯があります。

大河内 昭和30年代を作ることに関して言うと、ずっと組んでいる(設定考証の)白土晴一さんが僕に30年代をレクチャーしてくれたし、信用できるスタッフがすごくそろっていたので、そこは難しくなかったです。それに30年代にすることで自由に書けたところもあったんです。中学生の2人が銃を撃ったりタバコを吸ったりしても、大きな事件にはならない。子どもが車を運転しているのだって、あの時代ならあり得る話だし。そういう意味では割とリアリティ的に自由でいられましたね。

●今作のルパンの顔が素顔?

―― ルパン三世キャラクター性からいうと、「かえって中学時代を明らかにしない方がいいのでは」と思うところもありますが、その点についてはどうお考えですか?

酒向 究極、新作は作らなくてもいいという批判は分かります。でもルパンが続いてほしい、ずっと見たいという意見も分かります。いろんな意見を持ってる人がいるなかで、僕はルパンを死ぬまで“作りたい”じゃなくて“見たい”と思っていますけど。(ルパンの過去を)本来、明らかにする必要はないんですが、企画はなくならないっていう。それは言わない方がいいのか?

大河内 いや、別にいいんじゃないですか。誰かに勝手なものをねつ造させるくらいなら俺が作るってことでしょ?

酒向 そうですね。ルパンを作ることが僕がやりたいこと。同時に、自分の作品も自分でも見てますから。変なのは見たくないんですよ。あと見てほしくないんですね。だから、確かに明らかにしない方がいいという意見をお持ちの方がいらっしゃると思いますが、見てもらったらニヤリとするところはたくさんあります。それを見ても、いろんな意見を持つ人がいると思いますが、今回は大衆向けという風に僕は捉えているので、お詳しい方はおもうところもあるかもしれませんが、今回はルパン新入生に向けて作っている要素も大いにあります。

大河内 僕が感じているルパン三世の魅力はバラエティだと思っています。ギャグっぽい話が合ったかと思えば、翌週は次元のハードボイルドの話になって、その次の週はタイムマシンが出てきたりとか。どこまでSFでどこまでリアルで、どこまでギャグか分からない。視聴者の感想でも、「カリオストロは良いけど、マモーだめだね」って考えもあれば、「マモーこそ至高でしょ」「赤(ジャケット)は認めない」とか「(アニメシリーズの)PART4はいいけどPART5は嫌い」っていう考えがごちゃごちゃあることが良いんだと僕は思っています。

 もちろん過去を描いてほしくないという人もいれば、過去が見られてよかったって人も多分います。いろんなルパンの中でいろんなものがあって、「好きなものをチョイスすればいいでしょ」と考えているんです。今まである「ルパン」を全て好きにならないと「ルパン」が好きと言えないってことはないと思うんです。そういう意味で濃淡の1つとして「これを付け加えさせてもらっていいんじゃない?」という考えで作っています。

――今作は、ルパンが13歳の頃の話ですが、あのルパンの顔は素顔なのでしょうか?

酒向 原作から引用すると、銭形は「正体を見極めさせてもらう。その面の下に隠されてるまだ誰も見たことのねえ正体を知りてえんだよ」と話しているんですね。ということは、原作では銭形は「おそらく今見えてる顔の下に何かあるんじゃないのか」と多分感づいているんですよ。また、ルパン家に伝わる盗術第33条に、「いかなるときでも素顔をさらすな」っていうのもあるんですね。

 つまり、僕が思うのは、その素顔の下に何か顔があるかもしれないけど、それも本当の顔かどうかも誰にも分からないということ。(アニメシリーズの)PART5で見せていましたけど、それが本当の顔なのかはルパン不二子にしか分からないですよね。少なくとも本人に聞いていないので僕には分からないです。

大河内 まぁ結論をいうのは無粋だと思うんですけど、顔をさらさないだけじゃなくて基本的に一世のもとで盗術を修めた後の話ではありますよね。

酒向 つまりルパンがしきたりとか技を全部身に付けた後なので、今の13歳の顔が本当かどうかはルパンに聞かないと分からない。赤ちゃんが出てきたら本当の顔かもしれないですね。

●“自分のことは自分で決める”ルパンの魅力を伝えたかった

―― ルパン三世シリーズの魅力はどう考えており、今回の作品に取り入れた部分はどこでしょうか?

酒向 (ルパン三世シリーズの)魅力は、ルパン三世主人公だってところなんですね。つまり「ルパン三世」というタイトルの作品を見に行くとルパン三世を見られるんですよ。ルパン三世の人物そのものが一番の魅力です。

 それを詳細に言ったところで、多分見ていただいてるお客さんは、それぞれいろんな魅力をお持ちだと思うので断定するつもりはありません。ただ、ルパンをこれから見る人に僕からルパンの魅力を伝えると、彼は自分のことは自分で決めるんじゃないか。つまり他人にゆだねないタイプ。そこが、僕が思う彼の一番の魅力なので、ルパン三世を見る人に伝わるといいし、その点を楽しんでもらいたいなと思います。

―― 今作のルパンは、体力面を除くと13歳の時点でかなり完成されていると思いますが、そういう設定にしたのはどういう狙いがあったのでしょうか?

酒向 盗術はもう身に付けているので、身長とか体力以外は大人のルパン三世と同じ。精神年齢は違いますけど、持っている特技は同じにしています。(当時から)彼はIQ300子どもだったと思うんですよ。それに盗術というものが原作にはありますが、13歳になる前に身に付けたんじゃないかと想像し、フィジカルとメンタル以外は大人のルパンと変わらないようにしました。

―― 精神面にフォーカスするために、それ以外の部分は大人のルパンと同じようにしたのでしょうか?

酒向 作る側の話ですけど、畠中ルパン、武内次元っていう2人のキャラクター以外の要素はすべて“ルパン”にしたんですよ。なので、“ルパンくんのキャラクター性をどこに持っていくのか”というと、彼はお年頃だと思うんですよね。いろんな13歳の立場があるじゃないですか。国も違えば、おうちも違うし、地域も学校も違う。みんな立場やバックボーンは違う13歳なんですけど、13歳には13歳の共通項もあると思うんですよ。その点は今シリーズを通して使いたかったところです。

大河内 僕からすると2つ理由があります。1つは、やっぱりルパンって作品は、すごい能力を持った泥棒がすごい盗みをするのを楽しむものだと思ってるので、未熟な人を描いてもつまらないだろうと。もう1つは、ルパンが三世になるハードルって、“技術が身につくか身につかないか”ではなくて、“心を決めるかどうか”なんだと思うんです。だから、心以外の部分はすでにそろっていて、あとは心だけの問題になる状況が望ましいと思っていました。

―― 「LUPIN ZERO」の視聴を考えている人に向けて、メッセージをお願いします

酒向 これが全シリーズへの橋渡しのつもりで作っています。「ルパン三世シリーズの入り口になるかな」という思いもありますけど、「アニメとして面白いから見てね」と。ルパンかどうかで見るのを迷うのは置いておいて、面白い映像作品を見たいと思っているのであれば「LUPIN ZERO」を見てほしいと思っています。

大河内 ルパンを知っている方に言うと、今まで描かれていなかったし、これで事実が確定するわけではありませんが、「ルパンと次元の始まりの物語をちょっと見てみたくありませんか?」と。

 ルパンを見たことがない方には、「これは始まりの物語なので、ルパンを全く知らない人でも楽しめるので、とりあえず1話だけでも見てみて、面白かったら2話、3話も」と伝えたいです。

原作:モンキー・パンチ (C)TMS

LUPIN ZEROのビジュアル

(出典 news.nicovideo.jp)

続きを読む
Source: 芸能野次馬ヤロウ

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク