『イカゲーム』が世界で特大ヒットのワケ…日本の“デスゲームもの”と一線画す社会性

ヒットしている。

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(写真:Collection Christophel/アフロ

※本記事は、一部『イカゲーム』のネタバレを含みます。ご注意ください。

韓国発のドラマイカゲーム』の勢いが止まらない。9月17日Netflixで配信を開始すると、4週間で1億4,200万のアカウントが視聴。これは『ブリジャートン家』が持つ記録を塗り替え、Netflix史上最高の数字となった。

また日本のNetflix視聴数ランキングでも連日、上位に位置し、賀来賢人(32)や本田翼(29)もSNSで興奮気味に感想を語るなど、世界各地で『イカゲーム』旋風が吹き荒れているのだ。

なぜ、『イカゲーム』はこれほどまで世界で受け入れられているのか。その理由について、ハン・トンヒョンさんとの共著『韓国映画・ドラマ──わたしたちのおしゃべりの記録2014~2020』(駒草出版)などがあるライターの西森路代さんに話を聞いた。

「『イカゲーム』はユニークな人形やカラフルビジュアルが目を引くので、最初は『これまで観てきたデスゲームとどう違うのかな?』と気軽に1話を観てみた人が多いと思います。1話では『なるほどこんな感じなのか』と思わされ、続けて2話を観てみてみると、デスゲームに参加していた人が、日常生活に戻ります。

私はこの『日常生活に戻る』というところに、新しさがあったと思います。なぜ登場人物が過酷なデスゲームに参加しなくてはならなかったのかという背景を描くことで、現実の格差社会と地続きに感じられます。韓国のエンタメというと『パラサイト』が世界的に有名になりましたが、海外の視聴者はこうした社会的なエンタメこそ韓国の映像作品の魅力と捉えているのではないでしょうか」

多額の借金を背負っている主人公が、命を懸け、6つのゲームを見事すべて勝ち抜けば456億ウォン(約44億円)を手にすることができるという、いわゆる“デスゲームもの”である『イカゲーム』。挑戦するゲームは「だるまさんが転んだ」「型抜き」「綱引き」のように、子供時代に誰もが一度は体験したことのある簡単なものが多いのが特徴だ。

いっぽうで、デスゲームものといえば、『カイジ 人生逆転ゲーム』や『LIAR GAME』に代表される人気漫画を実写映画化し、いずれも高い興行成績を誇るなど、日本の“お家芸”の一つとも言われている。昨年12月に、Netflixで配信された『今際の国のアリス』もデスゲーム形式のストーリーだ。

日本のデスゲームものの特徴として、複雑なゲームに挑戦することが多い。『カイジ 人生逆転ゲーム』で行われた限定ジャンケンは、多数いる参加者のなかから対戦相手を探し、初めに配られたそれぞれ4枚ずつの“グー”、“チョキ”、“パー”のカードを消費しながらジャンケン勝負をするものだ。また『LIAR GAME』の少数決は、嘘をついていい質問を答え、多数派の人が脱落していくゲーム。複数回繰り返した後、残り人数が1人か2人になると終了する。

イカゲーム』が世界中でここまでヒットした背景には、その“ゲーム性”の違いがあると、西森さんは分析する。

「日本のデスゲームものは、作中で複雑なルールゲームが出てくるものが多い。またエンタメ色が強くて、設定が非現実的である傾向もあります。いっぽう、『イカゲーム』は“だるまさんがころんだ”や“綱引き”などのように至ってシンプルで、他国の方たちから見ても分かりやすいことが違いじゃないでしょうか」

イカゲームの監督であるファン・ドンヒョク氏(50)も9月29日配信の「THE Korea Economic Daily」のインタビューで、こう語っている。

《とんでもない話だが、少数のマニアだけが楽しめる話ではなく、現実的な話にしたかった。ファンタジー的な要素とリアルな要素を一方に偏らず一緒に付与することが重要だった》

また西森さんは、『イカゲーム』は最初から“デスゲームもの”が目的ではなかったのではないか、と推測する。

ファン・ドンヒョク監督は、この企画をリーマンショックを機に思いつき、その後、仮想通貨の高騰などを見て要素を加えていったと聞きます。それをどう映像化、物語化しようと考えた結果、デスゲームになったのではないでしょうか。

まず、自分の社会へ危機感があり、それをデスゲームという題材と新しい発想をミックスして作ったため、これまでのものと比べて物語や作風が新鮮に感じられたのではないかなと思いますね」

あくまでデスゲームは“目的”ではなくエンターテイメントとして見せるための“手段”だったのではないかという『イカゲーム』。そうした本作には“警告”が込められているのではないかと、西森さんは最後にいう。

「『多額のお金を手に入れたから幸せになれるのか?』というのが、この作品に込められたメッセージではないでしょうか。大金を得たことによって暮らし向きが良くなることがあるでしょう。

しかし、ゲームに参加した他の人々の犠牲の上で手にしたお金でギフンは幸せになれるのだろうかという疑問が終わりに近づくにつれて生まれました。現代の富に関しての疑問や経済至上主義社会への警告があるのではないかと思います」

(出典 news.nicovideo.jp)

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Source: 芸能野次馬ヤロウ

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