『世界一受けたい授業』嵐の番組に挟まれたのは過渡期の暗示か

長く続いている。

●「都道府県魅力度ランキング」を生放送で発表
テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第194回は、9日に放送された日本テレビ系バラエティ番組『世界一受けたい授業2時間SP』(19:00~)をピックアップする。

同番組は「古今東西の名物講師が登場し、自ら“使える学問”を講義」というコンセプト2004年10月スタート。さまざまなジャンルの講師を招いて、学校の授業に見立てた構成で放送され続けている。

今回の放送は、「都道府県魅力度ランキングを生発表」「売上枚数歴代1位の天才作曲家・筒美京平」「雨が降るとダルい…あなたは雨ダルさんかも」の3本立て。2時間スペシャルであり、しかも初の生放送だけに盛り上がりが期待されていた。

○■「往年の名曲が続々登場」のジレンマ

番組開始早々から「都道府県魅力度ランキングを生発表」がスタート。毎年恒例の企画であり、まずは「1位 北海道、2位 京都、3位 沖縄、4位 東京、5位 神奈川…………47位 栃木」という昨年のランキングが画面いっぱいに一斉表示された。

ここから今年のランキング発表へ……と思いきや、1つ目のテーマは「天才作曲家・筒美京平さん」。“歴代シングル 作曲家 売上ランキング”が表示され、筒美京平さんは2位 小室哲哉、3位 織田哲郎、4位 桑田佳祐、5位 つんく♂を抑えての1位だった。

講師としてスタジオに登場し、「大ヒット3つの理由」を語るのは、なぜかピアニストのハラミちゃん。「なぜハラミちゃん?」は視聴者に明かされなかったが、彼女がファミリー層ウケのいいキャラクターだからなのか。ただ、「土曜夜の番組に3度目のゲスト出演」ということは、やはり過去出演時の数字が悪くなかったのだろう。

主に60年代から90年代にかけて筒美さんが手がけた名曲が次々に流れ、ジュディ・オングスタジオに現れて「魅せられて」を歌唱。さらに、松本伊代が前に出てきて「センチメンタル・ジャーニー」を歌うシーンもあった。中には、現在の若手アーティストカバー映像も挿入されていたが、それでもこの内容では視聴者層は高くならざるを得ない。他局に先んじてコア層(13~49歳)向けの番組制作を進める日テレとしては悩ましいところではないか。

結局、大ヒットの理由は「詞先で作る」「世界の流行を取り入れた」「時代を超えて愛されるメロディー」の3つで、続けて「あなたの悩みを解決します! 音楽の処方箋! 筒美京平スペシャル」と題したお悩み解決コーナーを放送。

ところが、こちらはスタジオの「柳楽優弥有田哲平がテキトーな悩みをあげて、ハラミちゃんがピアノを弾くだけで何も解決しない」という生ぬるいコーナーだった。しかし、これは裏を返せば、「ハラミちゃんにピアノを弾かせれば数字を稼げる」という狙いなのだろう。
○■健康系はテンポよく短めで終了

2つ目のテーマは、「雨が降るとダルい」という“雨ダルさん”。天気痛の権威で愛知医科大学の佐藤純教授がリモートで出演し、「ホットタオルで耳を温める」「くるくる耳マッサージ」「寝る前に日記をつける」「ストレートネック解消ストレッチ」「梅干しヨーグルト」という5つ改善方法を紹介した。

まさに書籍の売れ線である健康実用書をそのまま映像化したような中高年層向けの内容であり、この番組の得意とするテーマだ。番組が始まった2004年から10年前後の時期は、そんな内容でよかったかもしれない。しかしその後、日テレは前述したようにコア層向けの番組制作を始めているし、他局を見ても健康情報バラエティは随分前に終了している。

だからこそ今回は“雨ダルさん”という若年層や主婦層も気になりそうなギリギリのテーマ設定だったのではないか。また、この日に放送された3テーマ中、最も短い時間で終わらせたところにも制作サイドの迷いが見え隠れしていた。

残り時間40分あまりになったところで、最後のテーマである都道府県魅力度ランキングスタート。ここでスタジオゲスト出演者が大きく変わり、茨城県出身のカミナリ、栃木県出身のU字工事佐賀県出身の優木まおみ埼玉県出身の佐藤栞里、北海道出身の滝菜月アナが登場した。

つまり、「ここまでの約70分間は生放送ではなく収録だった」ということ。日テレらしい手堅い構成である反面、「せっかくならスタジオパートくらいは生放送にしたほうが、ライブ感やスペシャリティが醸し出せたのに」と思ってしまった。

このランキングは、「各都道府県の人口比率に合わせて平等に選んだ全国3万5,000人に『どの程度魅力を感じるか』を5段階評価で選んだアンケート結果をまとめた」もの。今年で16回目だが、今回の焦点としては、「12連連続1位の北海道が王座防衛できるか」「7年連続47位を脱出した茨城県と47位に転落した栃木県北関東バトル」の2点という。

ランキングを作成しているブランド総合研究所・田中章雄社長がスタジオに登場し、ランキングは37位からスタート。37位 島根県、36位 岐阜県、35位 岡山県、34位 福島県、32位 和歌山県、32位 愛媛県、31位 山形県、30位 岩手県、29位 高知県、28位 香川県、26位 大分県、26位 秋田県、25位 山梨県、24位 富山県、23位 三重県、22位 新潟県、21位 青森県、20位 愛知県、19位 広島県、18位 熊本県、17位 宮崎県、16位 鹿児島県、15位 静岡県、13位 兵庫県、13位 宮城県、12位 千葉県までが一気に発表された。

●最も盛り上がるのは最下位争い
スタジオでここまでの結果を受けたトークが少し交わされたあと、10位 長野県、10位 石川県、9位 奈良県、8位 長崎県、7位 福岡県、6位 神奈川県、5位 大阪府、4位 東京都、3位 沖縄県、2位 京都府、1位 北海道を立て続けに発表。1位と2位が12年連続で変わらなかったことを見れば「このランキングが盛り上がるのは最下位争い」ということが分かる。

38位 滋賀県、39位 福井県、40位 鳥取県、41位 栃木県、42位 山口県、42位 徳島県、44位 群馬県、45位 埼玉県までが発表されたところで映像はストップ。最後に残された2県の魅力を紹介するVTRを特別扱いするように流したあと、ドラムロールが鳴らされる仰々しいムードの中、46位 佐賀県、47位 茨城県が発表された。

それぞれ簡単な観光情報が添えられ、時にクイズや名物料理の試食を交えての発表だったが、順位以外の楽しみ方はほとんどなかったと言っていいだろう。せっかくの生放送も、トークの配分は極めて少なく、クイズと試食は収録と変わらないものに過ぎなかった。

唯一、生放送の面白さを感じさせたのは、田中社長が長々と話し続けてしまい、ブツ切れ状態で番組が終わってしまったこと。これは残り時間わずかで一般人の田中社長に話を振った上田晋也の小さなミスだったが、むしろこれくらいのハプニングがあったほうが生放送らしくてネット上も盛り上がる。

もし日テレが今回の生放送で最後のシーンを反省しているとしたら、先の見通しは暗い。問題はそこではなく、「初の生放送」と打ち出しながら、ランキング発表以外で臨場感を生み出すことができなかったことにある。そもそもこのランキング日テレが作ったものではないだけに、この構成は消極的すぎたのかもしれない。
○■「マジメや地味」をカバーする工夫

一方、日テレらしい丹念な編集は健在で、技術的な点での不足は一切感じなかった。文字、イラスト、写真、楽譜、グラフなどで、カラフルかつ明るい画面を作り込み、ナレーションも適所に挿入。小刻みなカット割りやクイズ出題など、飽きさせないための小さな工夫が随所に施され、「手間を惜しまない」という制作姿勢は変わっていなかった。

それは「番組の性質上、どうしてもマジメで地味なテーマが多くなるため、カバーするための工夫が必要」という側面もあるのだろう。例えばテロップ1つ取っても、画面に明るさを生む白字をベースにし、赤字や青字にも白の縁取りをする徹底ぶりが見られた。

カラフルで明るいムード作りは画面だけでなく、スタジオセットなどにも表れていたが、だからといって日テレの狙うファミリー層や若年層に見てもらえるわけではないのが難しいところ。堺正章が75歳、上田晋也が51歳、有田哲平が50歳とメイン3人が高齢化している上に、前番組が相葉雅紀の『I LOVE みんなのどうぶつ園』、後番組が櫻井翔の『1億3000万人のSHOWチャンネル』に変わったことで、浮いた存在になっている感は否めない。

ただでさえこの番組は、「日テレゴールデン・プライムバラエティで最も出演者と視聴者の年齢層が高いのではないか」という声がある。今回の視聴率は個人全体が5.0%、世帯が8.2%で、日テレが重視するコアターゲット(13~49歳)の個人視聴率も3%台と聞いた(ビデオリサーチ調べ・関東地区)。

だからこそ、生放送であることをフル活用してTwitterのトレンドワードを席巻するような仕掛けがほしかったのではないか。「生放送の意味なかった」というコメントが見られたように、視聴者にその姿勢は見透かされている。
○■次の“贔屓”は…“くりぃむシリーズ”が日曜夜に降臨!『くりぃむナンタラ』

今週後半放送の番組からピックアップする“贔屓”は、17日に放送スタートするテレビ朝日系バラエティ番組『くりぃむナンタラ』(毎週日曜21:55~ ※初回1時間SP)。

テレ朝の深夜帯で放送されてきた“くりぃむシリーズ”の新たなブランドであり、同シリーズは奇しくも『世界一受けたい授業』と同じ2004年10月スタート。だからこそ長年の歴史で生まれてきた「ビンカン選手権」「ミニスカート陸上」など人気企画の復活が確実視され、シリーズファンたちを喜ばせている。

初回1時間SPでは、Snow Manの目黒蓮と東京五輪柔道金メダリストウルフ・アロンを遠隔操作するドッキリ企画「人間インストール」を放送。『くりぃむクイズ ミラクル9』と完全コラボしたスケール感も含め、期待値は高い。

木村隆志 きむらたかし コラムニスト、芸能・テレビドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月30本のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組にも出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』など。 この著者の記事一覧はこちら
(木村隆志)

画像提供:マイナビニュース

(出典 news.nicovideo.jp)

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Source: 芸能野次馬ヤロウ

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